今回は実際にうつ病・パニック障害などの回復過程について、どういった時期があり、どのくらいの時間がかかるのか。そして病気とのつきあい方について綴っていきたいと思います。
この記事の概要
- 体調には波がある。「揺り戻しとは?」を解説。
- 体験談から心の病気における回復期での心構えを解説。
意外に知られていない!?揺り戻し
病気の発症から回復に要する期間で急性期、回復期、慢性期とありますが、各々の語句について、簡単に説明いたします。
まず急性期ですが、これは簡単に「病気になりはじめた時期」です。症状も刻一刻と変わったりするので、精神疾患だと気づかない人も少なくないそうです。
そして慢性期ですが、いわゆる「病み上がり」といったところでしょう。症状は比較的安定していますが、社会復帰などに向けて活動しだす時期でもありますので、再発防止に向けてかかりつけ医との連携をとっていく必要があるます。
そして最後に回復期ですが、今回はこの回復期についてお話していきたいと思います。
当初の回復イメージ
まず私が当初、回復期に入ってから思い描いていたのは下記のようなグラフでした。
横軸(X軸)が回復時間、縦軸(Y軸)を回復状態とすると、上図のように純粋な直線グラフを想像してました。時間はどのくらいかかるかわからないですが、治るまでは何の障壁もないものだと思っていました。
しかし、私の場合は仕事を辞め、自宅で完全に寛解するまで療養する事を誓ったのにも関わらず、寛解するまで体調は一進一退を繰り返していました。
転院をして・・・
それまで、10年以上も通っていた病院に不信感を感じていた事もあり(後日、詳細をお話しします)、藁にも縋る思いで転院を私は決意しました。
そして、そこで新しい先生にお世話になる事になるのですが、私は思いもよらない事を聞く事になりました。
うつ病・パニック障害は波があるのが特徴なので、今後もそういった事があるかもしれません。
私はそれを聞き、まさに目から鱗が落ちました。つまりグラフに表すと
あくまでもイメージ図でリアル気味に書いてみましたが、こういう感じですね。回復期から寛解に至るまで自分の状態を観察し続けていたのですが、まさに曲線グラフ図のような感じでした。
これは当時書いていた日記でも確認できるのですが、大きい波(数週間~数か月単位)もあれば、小さい波(数日または数日おき単位)もたしかにありました。「3歩進んで2歩下がる」有名な曲にもありましたね。
いい流れもあれば悪い流れもある
曲線グラフの様に一旦上向きだった状態が一度落ち込んでしまう期間を「揺り戻し」または単に「悪い流れ」と言ったりします。
また「揺り戻し」という語句は金融用語などでよく使われるもので、稀にうつ病を説明する時に用いられる事もあるそうですが、正式な医療用語ではないため、実際に病院などでは使用しない方がいいかもしれません。ただ、ここでは分かりやすいように「揺り戻し」という言葉を使用する事にします。
さて、話を戻します。この揺り戻しのロジックが意外に知られていないため、悪い流れがくる度に落ち込んだりする事があるかと思われます。
でも安心してください!こういった悪い流れがくるのは病気を治していく過程では自然な事です。だから揺り戻しがきた時は
また再発がはじまった・・・もう自分はダメなんだ・・・もう一生治らないんだろう・・・
きまってこういった思考に陥りがちですが、
また来たか・・・でも自然な事だし、深刻になる必要ないか
このくらいの考え方で十分だと思います。
※ただ、自己判断で「揺り戻し」と決めてしまうのはリスクが大きいので、必ず医療機関に通って診断してもらいましょう。
揺り戻しのメカニズム?原因探しは?
それにしてもこの揺り戻しはなぜ起こるのでしょうか?
ホルモンバランスの乱れやエネルギーの消費など諸説あるみたいですが、残念ながらこの科学的根拠はまだ解明されていないそうです。
ただ、揺り戻しがきた時に
なんでこの時期に揺り戻し?まさか減薬のやり過ぎ?食生活がダメだったの?最近運動してなかったから?それともこの前の・・・
と何がダメだったのかと揺り戻しの原因を追究しがちです。しかし、その答えはおそらく出ないと思いますし、むしろそれを考えれば考えるほど、それが気になってしまい、どんどんネガティブに陥ってしまうのがオチでしょう。私もそうでしたから・・・
揺り戻しの際の心構え・症状に対する対処方法
最近、私の病歴の事を知っていただいたり、仕事柄の事もあったりでおかげさまでよく不安症候群の方やまたその慢性期にいる方から悩み相談を受ける機会があるのですが、
揺り戻しの時はどうやって過ごされましたか?
といった揺り戻しに向けての具体的な心構えの事であったり、
あの謎の体調不良はなんでしょうか?
といったように、揺り戻しのロジックについての事であったり、
揺り戻しってなんですか?
といった揺り戻しの根本的な内容であったり、質問を多くいただく事があります。
さて、揺り戻しの根本的な内容やロジックについては説明させていただきましたので、このセクションでは私が考える揺り戻しの心構えについて綴っていきたいと思います。
まず結論から述べますと、
- 揺り戻しは「心の風邪」と捉える
- 揺り戻しの日々を日記に記録する
- 症状を0にしようとしない
- ~までは良かったのに、の発想をやめる
- いい流れを気長に待つ
- 減薬の事はひとまず置いておく
- 365日・24時間本調子の人はいない
といった7項目です。それでは一つずつ見ていきましょう。
1. 揺り戻しは「心の風邪」と捉える
よくうつ病自体を「心の風邪」だったり、「心の癌」と比喩される事がありますが、私はこの揺り戻しを「心の風邪」と捉えた方がいいと思います(パニック症候群も同様です)。
もし、本当の風邪をひいた時は皆さんどんな対応をとられるでしょうか?
- 無理はしない
- できる限り負荷は負わない
- 頓服薬を飲んだりして症状を抑える
といったところではないでしょうか?特に、本当に風邪をひいた時は当然ですが、無理はしないと思いますし、風邪くらいでは深刻にとらえる事もないでしょう。
良い流れの時はジョギング、ヨガ、勉強をしたりするとすれば、”心の風邪”をひいた時はあまり無理はせずに「リラックスヨガだけにしておこう」といったものでもいいし、場合によっては全部中断してもいいと思います。また、かかりつけの病院から頓服薬(抗不安薬・抗うつ薬用)を処方されているのであれば、それを利用するのもいいでしょう。ただし、その際は医師の指示通りの用量を必ず守ってください。
2. 揺り戻しの日々を日記に記録する
悩み相談を受けている際に気付いたのですが、
日記やメモなどできるだけ付けるようにした方がいいですよ。
と言うと、相談者さんのテンションが一気に下がっていくのを肌で感じる事があります(笑)。やはり、こういった事は習慣になっていないと、面倒で仕方がないですよね・・・かくいう私も仕事以外では、とにかくペンを持つという習慣が全くなかったです。
ただ、日々の体調がどのような感じであったかはできるだけ日記に記しておく事をおすすめします。
なぜかといいますと、一度経験した揺り戻しを記録しておくと、次に揺り戻しがきた時に確認することができるからです。
「えっ!?それだけ?」と思われる方いらっしゃるかもしれません。でも、回復期にもし何度も揺り戻しがくる事を想定した時に以前までの日記を確認してみると、
そうか、前回も同じような事で苦しんでいたんだな。じゃあ今回も乗り越える事ができるな!次にもしきても大丈夫なように日記に書いておこう!
というように、精神的にだいぶん楽になります。悪い流れの時に日記に記録するという行為自体が辛い事に聞こえるかもしれませんが、揺り戻しがくる事を前提としていればそこまで苦ではなくなると思います。
また、もしかするとこういった疑問が浮かぶかもしれません。
わざわざ日記に書かなくても覚えられそうなものだけど・・・
実際、こういった声も聞いた事があり、私もこう思ってました・・・でも一度いい流れに戻ると、その記憶って消えてしまうものなんですよね・・・そして次に揺り戻しがきた時に慌ててしまう。この繰り返しは極力阻止した方がいいと思います。
そして、書く内容や量ですが、自分が納得できればOKだと思います。だから1行だけでも十分であればそれでいいと思います。
一応、例を挙げてみると、
×月×日
日中は過呼吸がひどかった。夕方からは少しは楽になってきたが、夜ご飯を食べた後くらいから頭痛がでてきたので諦めて頓服薬を飲んだ。まあでも昨日よりはいくらかマシかな。いい流れを待とう。
といったように数行程度でいいと思います。また最後には必ずポジティブな言葉でしめるようにしましょう。
そして日記をつけるノートですが、もちろんなんでもいいですし、スマホのメモ帳やノート用のアプリを使っても全く問題ないと思います。ご自身の都合のいいものを選んでください。
3. 症状を0にしようとしない
これは揺り戻しの時に特によくある事で、症状がなかなか治まらない事に焦りを感じたり、イライラを感じたりした時によくやりがちな事なのですが、今まさに症状がでている際に「早く、消えろ!消えろ!」という思考に駆り立てられがちだと思います。
これははっきりいって逆効果です。消えるどころか、症状が長引いてしまう原因になってしまうでしょう。
こういったマインドフルネス(※)とは全く真逆の行動、これを拒否反応というのですが、これは不安症においてはよくないとされています。ただ、いきなりの症状に「うろたえるな」というのは難しい話でしょう。やはり自然に出てくる感情にはどうあがいても勝てません!
そういう時は、その出てきたネガティブな感情に対して決して「ジャッジ(評価)しない」事です。これはルールとして習慣づけしておきましょう。そして「今ここに意識を戻し」、「今起きてる事を全て受け入れ」た上で、症状を決して0(消えろの感情)にしようとせず、緩和するまで気長に待ちましょう!最終的にそれが一番の対処法となるのは私の経験上からもはっきりしています。
※マインドフルネスについては下記ページで詳細に解説していますので是非こちらもご覧ください。
4. ~までは良かったのに、の発想をやめる
後ろ向きな事で、こういった思考になったことはないでしょうか?
昨日まではこの時間安定してたのに・・・
去年の今頃は仕事バリバリやってたのに・・・
実際、私も相談を受ける時によく耳にしますが、はっきりいってこのような発想は自分を追い込んでしまい、また脳に大きな負担を与えるだけなのは容易に想像できると思います。
もし、できる事なら「先週よりは発作が起こる時間が減ったぞ!」などのようにポジティブに過去を思い出せればいいのですが、やはり人間の脳はこんなに都合よくできていないと思います。
それならばいっその事、過去の自分と比較する習慣をやめる方に持っていく方がいいでしょう。
大事な事なので、このセクションでももう一度言っておきます。自然に出てくる感情にはどうあがいても勝てません!だからもし、過去の自分を思い出し悲観するような事があっても、その感情を決してジャッジする事なく、「今、ここに」戻ってきましょう!そうすれば自然にこういった習慣も減ってくると思います。
5. いい流れを気長に待つ
精神的症状はもちろんの事、身体的症状が出てくると心も陰に入ってしまいがちです。身体的症状が頻繫に出てくる時があっても、深刻にならずにひたすら自身の症状を観察し続けるだけで大丈夫です。どんなに大きい揺り戻しがきても、一日の内に症状が緩和される時間帯は何度か訪れるはずですので、ここはゆっくりと、焦らずに・・・
そして深刻にさえならなければ、いい流れ(体調が上向く期間)も早く訪れるでしょう。これはストレスを抱えた時に経験されている人も多いのでは、と思います。
6. 減薬の事はひとまず置いておく
これは後日詳しくお話したいと思うのですが、減薬についての事をネガティブに考えてしまうのもこの時に多いと思います。例えば、
抗不安薬の減薬もまだまだなのに、こんな体調悪化して・・・もうしんどい・・・
といった具合です。特にベンゾジアゼピン系の抗不安薬に関しては依存性が比較的強いとされているので、余計考えてしまうかもしれません。(離脱症状などあるため)
しかし、これは私も経験済みなのですが、こういった後ろ向きの考えも一過性のものです。また状態も上向いてくると、
お!そろそろ減薬する良い頃合いかな?次の診察の時にでも先生に相談してみよう!
といった考えもじわじわとやってきます。まあ人間こんなものかもしれませんね・・・とりあえず、少なくとも揺り戻しの期間だけは減薬に関しては棚上げしておきましょう。
7. 365日・24時間本調子の人はいない
そして最後の心構えはそもそも論になるのですが、どんな健康な人でも当然のことながら常に体調がいい、という人はいないという事です。
私のパートナーもたまに言っていることなのですが、女性に関してはホルモンバランスの変化や月経などの都合により、体調が安定している時は1か月で1週間ほどしかないそうです・・・そしてホルモンバランスの乱れについては当然、男性にも言える事です。
この事実からも分かるように、365日・24時間本調子の人はいません。つまり、不安症だったり、大きな病気を抱えていない人でも、程度はありますが、誰でも揺り戻しはあるという事です。
この事が頭に入っているだけでも、
そうか、みんな一緒なんだな。ある程度は仕方がない。
と割り切れる事があると思います。揺り戻しが大きければ大きいほど「なぜ自分だけ・・・」とネガティブになりがちですが、「みんな一緒」と知れば、人の心理として安心感が得られやすいと考えられます。
まとめ
最後にまとめです。
- 回復期には「揺り戻し(悪い流れ)」が存在する。
- 揺り戻しには「大きい波」もあれば「小さい波」もある。回復していく上では原則避けて通れない。
- 揺り戻しの原因は解明されていないので、原因探しは不要。
- 私が考える揺り戻しの際の心構えは7項目ある。
- 揺り戻しは「心の風邪」と捉える
- 揺り戻しの日々を日記に記録する
- 症状を0にしようとしない
- ~までは良かったのに、の発想をやめる
- いい流れを気長に待つ
- 減薬の事はひとまず置いておく
- 365日・24時間本調子の人はいない
以上です。揺り戻しの際の心構えに関しては1項目でも2項目でも結構ですので、是非実践していただき、少しでも皆さんのお役に立てれば幸いです。
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