アドラー心理学の視点から見る「課題の分離」。自分軸・他人軸を独立させる

これまでアドラー心理学についての記事で「原因論・目的論」、「共同体感覚と他者貢献」を解説してきました。今回はアドラー心理学シリーズの第3回目で、「課題の分離」について紹介したいと思います。

※これまでのアドラー心理学シリーズは下記に掲載しておきます。是非こちらもご覧ください。

こんな方にオススメ
  • よく相手からの評価・顔色が気になる。
  • 相手が思うように動いてくれないと、ついイライラしてしまう。
  • 相手に何らかの手伝いをする時、必ず見返りを求めてしまう。

「課題の分離」とは? – アドラー心理学シリーズ3

嫌われる勇気(以下、本書)は当記事を作成する上で参考にした文献です。是非こちらもご覧ください!

まずは「課題の分離とは」社会生活を過ごす中でどういう意味合いをもつのでしょうか?

自分の課題と他者の課題

結論からいうと、他者の課題に土足で踏み込まない。または自分の課題に土足で踏み込ませない事を意味します。

う~~~ん、ピンとこないな~。仕事の事?私生活の事?

まだまだこの段階ではこういったところだと思います。

とりあえずここでは他者の課題、自分の課題の線引きは、その課題の最終的な責任を負うのは誰か?最終的な結論を出すのは誰か?が基準になるという事だけを伝えておきますね。

最終的に決めるのは相手

上記の「こんな方にオススメ」の所で

  • よく相手からの評価・顔色が気になる。
  • 相手が思うように動いてくれないと、ついイライラしてしまう。
  • 相手に何らかの手伝いをする時、必ず見返りを求めてしまう。

この3点を挙げましたが、これらは全て自分ではどうする事もできないものになります。

自分の思考相手の行動
よく相手からの評価・顔色が気になる評価をするのは相手
相手が思うように動いてくれないと、ついイライラしてしまう思うように動く、または思うように動けるかは相手にしかわからない
相手に何らかの手伝いをする時、必ず見返りを求めてしまお返しをするかを決めるのは相手

理由としては上記の表のようなところになると考えられます。

課題の分離ができていないと・・・

以上のように、よくよく考えてみると他者の問題なので、自分ではどうする事もできない事柄は多く存在します。

こういった他者の課題、自分の課題について分けて考える事ができないと、

  • 承認欲求に支配される。
  • 他人軸、つまり他人のために生きる事になる。

これらのように非常に面白味もなく、窮屈で生きづらい人生になってしまいます。

少なくとも他人軸ではなく、自分軸(常に自分が主語)で生きる事が必要になると考えられます。

課題の分離が必要!

しかし、課題の分離といってもそんなにうまくいくかどうか・・・。と、思う方もいる事でしょう。問題点としては

  1. 自己中な人が増えるだけでは?
  2. 人間関係が味気なくなるのでは?
  3. 親子間では微妙では?

以上のようなものが考えられると思いますが、課題の分離は可能です。それでは1つずつ解説していきましょう。

自己中な人が増えるだけでは?

まずは「自己中な人が増えるだけでは?」についてですが、たしかに問題を分けてしまうと責任まで分けられる事になり、結果無責任な人が増えてしまいそうなイメージです。

しかし、本書(「嫌われる勇気」)ではむしろ発想が逆だと綴られております。

上記でもお伝えした通り、他者の問題は結局他者にしか結論が出せないのが全てで、それを無視し、土足で他者の問題に踏み込むと、対人トラブルが発生する原因になるだけだと本書は説明されています。

やはり「最終的な責任は誰にあるのか」を認識させたり、くだらない責任転嫁を避けるためにも問題は分けるのがベターだと考えられます。

私の経験より

これは余談で課題の分離を知ったあと、私が過去に電機メーカーの職場で経験した事になるのですが、上司(部長クラス)の方で自分が了承した案件にも関わらず、責任をとりたくないために部下に丸投げをするクセのある人を思い出しました。

まあ、あるあるですね・・・。

何か仕事上のトラブルが発生しても「いや、俺は知らない」「俺は関係ない」というのが口癖の方なので、今思うと課題の分離どころか自分の責任範囲すら認識できなかったのかもしれませんね。

こういった人間関係の軋轢を避けるためにも、早い段階で「責任が誰にあるのか」について明らかにしておく方がいいでしょう。

人間関係が味気なくなるのでは?

次に対人関係についてで、課題の分離によって対人関係というものが味気なくなるのでは?という疑問です。

これについて、本書では「全く干渉しないというのではない。」と伝えられており、むしろ課題の分離をした方が健全な人間関係が築けるものだと語られています。

少し例をみていきましょう。

ケース・職場の先輩、後輩

職場でのケースを例にとってみましょう。仮に自分を後輩、他者を先輩とおいてみます。

自分が仕事のトラブルに対処している際、もうすぐで何か糸口が見つかりそうなので自分で解決したい時、他者が見てられないと言わんばかりに

いやいやそうじゃないだろ!もっと頭使えよ!いいか、ここをこうして・・・ ・・・

まあこれもよくある光景かもしれませんね。でももし、ここでいう「自分」があなただったとしたらどう感じるでしょうか?

おそらく、「あー鬱陶しい!」「あんたに聞いてねーよ」といった感じだと思います。まあ実際にどういったトラブルなのか説明する時間も惜しいですからね。

それでは、この例での自分の課題、他者の課題を表に整理しておきましょう。

課題
自分(後輩)仕事のトラブルを対処する
他者(先輩)特になし。
あえていうと、その仕事のトラブルを後輩の力で対処させるためにフォロー役に徹する

上記のような感じだと考えられます。はっきり言って他者は自分を見下したいだけという風にも捉えられますし、そもそも自分が全く望んでいないのにアドバイスをされると対人関係に軋轢ができるのは容易に想像できます。

やはりこういった事がないようにお互いに尊重しあう関係である事が必要だと考えられます。決して他者の課題に土足で踏み込んだり、他者を操作しようと考えてはいけません。

対処法は?

それでは自分は他者から上記のようないらぬアドバイスをされたり、また余計な話をされたり、興味のない武勇伝を語られたりする際はどうすればいいのでしょうか?

こういった場合、よく考えられる事は

でも言う事を聞いておかないと嫌われたり、後々自分の仕事に影響があっても困るからな~

といった事ではないでしょうか?

ただ、「最終的に決めるのは相手」のとこでも述べましたが、大事な事なのでもう一度言っておきます。

自分がいくら嫌われたくないと思ったところで、それを決めるのは他者の問題であり、見返りを求めたところでお返しをするかを決めるのも他者の問題であるのは間違いありません。

よって、横からどうでもいい話をされたりしても、「今、忙しいので!」というようにはっきり口にするのでもいいですし、「反応しない練習※」を参考にしてひたすら相手にしないのもいいと思います。

余計な感情は持たずに他人を軸として生きるのではなく、あくまでも「自分軸で生きる」ということですね。

※反応しない練習については下記を参考にしてください。

親子間では微妙では?

最後に親子間ですが、たしかに親と子はかなり近い存在になりますので、特に親が子の問題に介入してしまうのは仕方ないようにも思います。

しかし、ここでも本書では近い存在だからこそ課題の分離が必要だと伝えられています。

これはどういう事でしょうか?例をみてみましょう。

ケース・子供のしつけ

親が子供をしつける時の事を例にとってみましょう。ここでは自分視点を親、他者視点を子供とおいてみましょう。

ある平日の夕方、小学生の子供が学校から帰ってきてからゲームばかりしていて、なかなか宿題をしようとしません。そんな時、親は

遊んでばかりじゃないの!宿題は済んだの?私が子供の頃はもっと・・・ ・・・

まあこう言ってしまいますよね・・・。ただここで重要なのは説教する事ではなく、イライラして怒ってしまう事です。

これに関しては親子間だけではなく、色んなケースに当てはまるのですが、他者が思い通りに動かず怒ってしまうのは、本書では「逆効果」だと綴られています。

続けて、自分の思い通りにいかないのは当然の事と本書で述べられておりますので、そこで追い打ちをかけるように怒ってしまうと対人関係に大きな溝が生まれてしまうのは当然の事です。ちなみに私はこの理論には大いに共感しました。

以上からこの親子間の問題の場合、他者(子供)の問題である以上、結論を出すのは他者でしかできません。

ただ、だからといって何もしないのはどうかと考えられます。本書では、こういう場合はいつでもサポートするよ、という意思表示が必要だと綴られています。あくまでもフォロー役に徹する事が大事なんですね。そして、上から目線で子供と接しがちですが、どんな場合でも横から目線で勇気づけ(困難をのりこえるための活力を与える技法)をするようにするように心がける事が必要です。

まとめ

それでは最後にまとめです。

  • 課題の分離はアドラーの考え方である。
  • 課題の分離は自分の問題、他者の問題を分ける事である。
  • いくら他者に求めても、それを決めるのは他者である。
  • 他人軸ではなく、自分軸で生きる。
  • 課題の分離が不可能にみえても自分軸で物事を考えれば可能になる。
  • 上から目線ではなく、横から目線で勇気づけを心がける。

以上です。

参考文献

全世界で485万部の大ヒットを記録したバイブル本です。是非ご覧ください。

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